小雨

 

ベットに脱ぎ捨てられた白いブラウス

天井まで積み重なる本

継ぎ接ぎで作られたカーテン

そこから漏れる小さな光

あなたが一番大切なものだと言っても

あなたじゃなくなった途端に必要とされない

変わるものは小さな波になり、凪いでいる

 

違う人の影とわたしの影が重なる時もある

何もなかったことにはできない

そう思う人とも早かれ遅かれ 手を振り別れる

 

彼女は幸せなときもいつも死の話をする

死が近いことを知っているかのように生を生きる

丘の上から街を眺めた 次の日彼女は死んだ

それは雨の日だった それは小雨

傘をさすほどでもない、でも確かに私の身体に

心にゆっくりと鉛を留める小雨

 

死に向かう人と接する中での喪失感と、

同時進行で進み訪れる生活との間、

生と死が共存する日常は その間は その隙間は

埋めるものでもなく 埋まらないもので

それでも降り続ける小雨が溜まっていく水たまり

 

今、丘の上をひとり眺める

この瞬間は幸せでいたい