二月の

争いが暮れた世界で

燕になって あなたの元へ

高く高く飛べないが

羽を広げ風に乗る

庭木の枝が枯れる頃

幼き日々の街をゆく

痩せたその背中は

枝の先の空へ向かう

二月の燕よ、枯れた声の優しさよ

二月の僕らよ、遠くへと飛び立てよ

かすかに光るその目には

赤子に触れるその風は

過去を辿り 今に凪いて

空の先に漂っている


祖母の部屋に入ると、いつもの椅子に座ってひとり楽しそうに誰かと話している。現実のことなんて一つも話さなくなった祖母をイカれてしまった、という家族。でもわたしは前よりも祖母の心が近いところにある気がした。手で口を押さえて、泣くほど笑いながら誰かと話している。誰と話しているの?って聞いても、人なのかもわからなかった。会うたびに一言目が久しぶりになってしまってごめんね、と私が言うと、いつも燕になって屋根の上まで会い来よるやんね、とケラケラ笑う。話を聞くと、色んな人が色んなものに化けて祖母に会いにきていたみたい。

わたしはまたあなたに会いに行きたいと思って、この曲ができた。